
INTRODUCTION
COPDという疾患をご存じでしょうか?ちょっと耳慣れない言葉ですが、肺が炎症を起こして呼吸が困難になっていく進行性の慢性疾患のことで、たばこの煙などの有害物質を長い間吸い続けることで起こるといわれています。今回は食事でCOPDの症状を軽減していく方法を解説します。
COPDとは?
COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Diease)とは日本語で慢性閉塞性肺疾患といい、2001年にWHO(世界保健機構)が「肺気腫」と「慢性気管支炎」の両方を合わせて統一しました。
徐々に呼吸がしづらくなり、咳や痰がらみが増えていきます。
息切れのために軽い動作でも休み休み行わなくてはならず、外出もおっくうになります。外に出ないと運動不足による肥満や免疫力低下、合併症発症を誘発してしまい、さらにCOPDを進行させてしまう悪循環に陥ります。
COPDの原因
主な原因はたばこの煙とされ、喫煙者の20%がCOPDにかかるといわれています。
また、喫煙者ではないのにCOPDにかかる人は患者のうち10~20%の割合で、乳幼児期の重い肺炎や受動喫煙、遺伝体質、ほこりや煙の多い職場で長い期間過ごすのもCOPDの引き金となります。
進行の特徴
COPDはゆっくりと進行するので、軽度のうちは自覚がない場合がほとんどです。咳や痰、息切れなどの症状が現れても「年のせいかな?」と気にせず生活するうちに肺では炎症が進んでいきます。
そのうちに急激に病状が悪化し息苦しくなりますが、治ったと思ったらまた悪くなるというパターンを繰り返します。重症化が進むと服を着替えるだけでも苦しく、最終的には寝たきりとなってしまいます。
食事で改善する方法はある?
COPDの治療はまず禁煙や空気環境の改善、そして服薬治療です。そこにプラスして食事を工夫すると治療の効率アップにつながるので、治療中の方はぜひチェックしておきましょう。
太っている場合は肥満を解消する
肺の疾患というと痩せている人をイメージしがちですが、意外にも軽度のCOPDでは肥満体型の患者が多いことが分かっています。肥満は炎症をすすめてさらにCOPDを悪化させてしまうので、適正体重を目指してダイエットする必要があります。
COPDの治療は禁煙が第一ですが、たばこをやめると一時的に食欲が増進します。そのため禁煙開始と同じタイミングで食事を野菜中心に切り替え、運動する習慣を取り入れましょう。
初期段階のCOPDでは、日常的には普通に過ごせていても運動すると呼吸が辛くなる場合があります。こうしたケースではじっと動かずにいれば苦しくないので、服薬の必要を感じない上に運動を避ける傾向に陥りがちです。
しかし、体内ではじわじわと炎症がすすんで悪化してしまうので、この悪循環を断ち切るために運動しても症状が出にくいようにしっかり服薬治療をしましょう。運動は炎症を抑え、免疫力を維持するためにも必要です。
痩せている場合は1.3~1.5倍のエネルギー摂取が必要
COPDが重症化してくると、今度は痩せた方が増えていきます。これは呼吸に過剰なエネルギーを消費するためです。
健康な方で必要とされるエネルギーのおよそ1.3~1.5倍ものカロリーを消費してしまうので、通常の食事を摂っていたのではさらに痩せて免疫が低下してしまいます。
エネルギーアップにおすすめなのが脂質です。身体に必要なエネルギーは炭水化物、たんぱく質、脂質の3つ。いずれもエネルギーに変わるときに二酸化酸素を発生しますが、とりわけ二酸化炭素排出量が多い炭水化物は呼吸回数を増やすので息苦しくなります。
その点脂質は二酸化炭素排出が少なく、同じ重さの炭水化物の2倍以上ものカロリーを摂取できます。揚げ物や炒め物、オイル漬けが脂質の多いメニューです。重度COPDの場合は食欲が低下するので、3食の量を増やすのが苦痛な場合は間食で補いましょう。
栄養補助食品としてドラッグストアやスーパーでも販売されている高脂質ドリンクや、MCT(中鎖脂肪酸。味噌汁や飲み物に混ぜてエネルギーアップできる)を使うのもおすすめです。
また、ビタミンやミネラル、たんぱく質を豊富に含む野菜や肉、魚は積極的に摂りましょう。これらの食品は免疫強化に役立ちます。風邪やインフルエンザにかかるとさらにCOPDが増悪してしまいますので、感染症対策もしておきましょう。
逆流性食道炎を合併している場合
加齢とともに逆流性食道炎になる方は少なくありませんが、これは咳を誘発する原因になります。
逆流性食道炎を悪化させないために、刺激のある食べ物、例えば唐辛子や香辛料など刺激のあるもの、酸味の強いもの、熱すぎる飲み物や食べ物は避けた方がよいでしょう。
まとめ
COPDの治療というと食事はあまり関係ないように思われがちですが、体重コントロールを含む食事管理はCOPDの症状緩和に役立ちます。治療と運動に並行し、無理のない範囲で食事を工夫してみましょう。