
INTRODUCTION
関節リウマチと聞いて、関節だけの病気だと思っている方が、多いのではないでしょうか?実際は気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症と同じく、免疫アレルギー疾患になります。30歳以上の人口の約0.5~約1%にあたる人が、関節リウマチにかかり、男性よりも女性が発症しやすいといわれています。今回は関節リウマチについて解説していきます。
関節リウマチとは
免疫は、体内に侵入した病原体などを、異物として攻撃し排除することで、自分の体を正常に保つ仕組みになっています。ところが免疫に異常があると、自分自身の正常な体の一部を攻撃してしまうことがあります。この症状を、自己免疫疾患(アレルギー疾患)といいます。自己免疫疾患は炎症性の疾患で、全身に様々な症状が出ますが、その中で関節に起こる症状が、関節リウマチになります。関節リウマチ患者の男女比は、男性3:女性7と圧倒的に女性が多く占めています。また比較的若い頃から発症し、30代~50代に多いのが特徴です。高齢者が発症する場合、男女の発症率に差はないようです。16歳以下で発症する関節リウマチは「若年性関節リウマチ」と呼ばれます。
関節リウマチの病因
遺伝、免疫異常、未知の環境要因など、複雑に関与していると考えられていますが、詳細はまだわかっていません。環境的な要因として、喫煙は関節リウマチの発症のリスクを増大することが、知られています。また関節リウマチは出産を契機に発症したり、悪化することが知られていますが、妊娠中は逆に症状が改善することが多いそうです。
関節リウマチの症状
関節リウマチの症状
関節の炎症により、主に手足の関節が腫れたり、痛みを感じます。進行すると、関節の骨や軟骨が破壊され、関節が変形して動かせなくなり、日常生活の活動に、重大な支障が生じます。関節破壊は発症して6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の症状から、1年間の進行が最も顕著だそうです。関節リウマチの炎症は全身におよぶため、関節以外にも症状が出るようです。
関節リウマチ初期の主な症状
初期の症状としては以下のようなものになります。
- 原因不明の微熱や倦怠感(だるさ)が続く。
- 朝、手や足の指にこわばりがある
- 食欲が減退し、体重が減少する。
関節リウマチの症状は、朝起きてから30分以内くらいに最も出やすく、日中や夜は落ち着くのが特徴です。進行すると貧血や内臓の障害などもみられます。早期発見、早期治療で、これまでと変わらない生活ができる可能性が高くなりますので、症状に思い当たるものがあれば専門の医療機関を受診して下さい。
関節の症状
手足のこわばりや腫れの症状は、関節を包む髄膜が炎症しているためです。進行すると腫れた関節に痛みや熱感といった症状が出現し、左右両方の関節が動きにくい状態になります。症状は、手の指の第2関節と第3関節に症状が現れやすく、足の指の付け根の足根関節にみられる症状は、関節リウマチの特徴的なものです。
手足の指の関節症状
関節リウマチが進行すると炎症によって、手足の指の関節が破壊されて変形することがあります。
具体的な症状については以下のものがあります
- 物がつかみにくい
- 手や指に力が入らない
- 細かい作業がしづらい
- 歩くときに痛みがはしる
膝の関節症状
炎症によって滑液が大量に分泌され、膝関節の中にたまると、膝が腫れます。症状が進行すると、骨が破壊され、動かした時に強い痛みを生じたり、変形したりします。
股関節の症状
関節リウマチが進行すると、股関節に症状が現れる場合があります。股関節の破壊が始まると進行が早く、強い痛みがあるのが特徴です。
膝、股関節の具体的な症状としては以下のようなものになります。
- 立ったり座ったりが不自由になる
- 歩行が困難になる
肩や肘の関節症状
初期症状として、肩が痛む、腕が上げにくいといった症状が現れます。肩の関節の破壊が進むと、腕が上がらなくなり、肘の関節の破壊が進行すると、肘が曲がったまま動かなくなる場合があります。
首の関節症状
首の骨は全部で7つあり、上から、リング状の形をした1番目の骨と、突起状の形をした2番目の骨に炎症が起きやすく、関節のズレや亜脱臼を起こすと後頭部に痛みなどの症状が現れます。進行すると神経が圧迫され、手の指のしびれや、脱力感、細かい作業が出来なくなるなどの症状がみられます。
関節以外に現れる症状
微熱、全身の倦怠感、疲労感
関節リウマチは全身におよぶ炎症性の疾患のため、炎症が強い時は微熱が続いたり、体がだるい疲れやすいなどの症状が現れます。
リウマチ結節
結節(コブ)は関節リウマチ患者の約20~30%にみられます。リウマチの症状の強い人に多く、肘、膝、後頭部など圧力のかかる部位にできやすい傾向があります。痛みはなく,圧痛もありません。
間質性肺炎
肺は肺胞と呼ばれる空気の袋が集まって形作られていますが、この肺胞どうしをつなぎ止めている組織が間質です。間質性肺炎は、間質に炎症が起こり間質の部分が厚くなっていきます。症状が進行すると肺の弾力性が失われて、呼吸がしづらくなります。人によってはひどい咳や呼吸困難がみられます。
血管炎
血管壁の内側に起こる炎症で、内臓器官にさまざまな症状を引き起こします。内臓の動脈に血管炎が起こることもあり、特に心臓の血管に炎症が起こると弁膜症や心膜炎、あるいは心筋梗塞につながるため注意が必要です。
血管炎の主な症状
爪の症状
爪の周囲に点状出血、皮疹や発疹、紫斑が起こります。
皮膚の症状
潰瘍(かいよう)がひざから足首までにできることが多く、皮膚に穴があくこともあります。
手足の指の症状
壊疽(えそ)が指の先にできやすく、壊死(えし)に至ることもあります。しびれや感覚マヒが起こります。
目の症状
(上強膜炎、強膜炎)が起こります。白目の充血や目の痛みが生じます。
間質性肺炎や血管炎が重症化するタイプを「悪性関節リウマチ 」といいます。
骨粗鬆症
痛みや腫れのある関節の近くの骨に骨粗鬆症が起こりやすいという特徴があります。
貧血
炎症物質の作用で、血液中の酸素を運ぶヘモグロビンの数が減り、関節リウマチの患者の多くに貧血が現れます。
関節リウマチの予防と対策
残念ながら関節リウマチの発病を予防することはできないようです。もし関節リウマチを発症したならば、治療に全力を傾けることが大切です。近年は診断技術と治療薬の進歩により、早期に適切な治療を開始すれば、15~20%位の方は症状が収まるようです。また関節リウマチの進行を抑え、症状を改善する事も重要になってきます。そのために、日常生活の中でも、気をつけたり工夫したりすることが大切になります。
日常生活で心がけることについて
以下のようなことを日常では心がけましょう。
- 十分な睡眠と安静をとる
- 栄養バランスの良い食事をとる
- 関節を冷やさないようにする
- ストレスをためないようにする
- 適度な運動をする
リハビリとしての運動
以下のような運動をおすすめします。
- 水中ウォーキング
- 水泳
- 上下肢の関節のストレッチ
- 筋力トレーニング
- ラジオ体操
運動は体力維持・向上、関節変形予防に役立ちますので重要です。痛みがでないように、無理のない程度に続けて下さい。
感染症、合併症の予防
抗リウマチ薬や生物学的製剤などで治療をしている方は、病気の進行が抑えられていますが、免疫力が低下しているために、感染症にかかりやすくなっています。そのためには・・・
以下の点に注意して下さい。
- うがい・手洗いの実行
- マスクの着用
- 流行性感染症の予防接種
- 疲れをためないようにする
栄養バランスのとれた食事・適度な運動・十分な睡眠は体調管理の基本です。そのほか、たばこを吸う人は禁煙する、適正な体重を維持するなど、体をよい状態に保つよう生活習慣の改善に取り組みましょう。
終わりに・・・
関節リウマチは進行すると、治療期間も長くなり、重篤な症状を引き起こす可能性が高い病気です。しかし早期発見、早期治療をすれば症状が抑えられて、完治する可能性もある病気です。そのため、指などに違和感を感じたら早急に専門の医療機関で検査をするようにしましょう。