春が近づいてくると、キャンプやバーベキューを計画される方は多いのではないでしょうか。しかし野外では衛生管理がしづらいため、食中毒を起こすケースも少なくありません。今回はアウトドア先で起こりがちな食中毒とその対策について解説していきます。
野外で起こりがちな食中毒とは?
食中毒を引き起こす菌やウィルスのうちでも、特にアウトドアシーンで注意したいものは3つです。
カンピロバクター
生の鶏肉に多く、市販品のおよそ6割からカンピロバクターが検出されるといわれています。
鶏肉だけではなく豚肉や牛肉からも検出され、平成30年の食中毒報告件数の24%、全体のおよそ1/4を占めるのがカンピロバクターによる食中毒です(ちなみにノロウィルスは19.2%です)。
症状が出るまで2~7日と期間が長く、下痢や嘔吐といった胃腸症状のほかに頭痛を起こすこともあります。
小さなお子さんや高齢者など免疫の弱った方で重症化する場合があり、まれに「ギランバレー症候群」といって筋力低下や末梢神経の障害を引き起こすこともあります。ギランバレー症候群では重症になると歩行や呼吸が困難になるケースがあります。
ウェルシュ菌
「一晩寝かせたカレーで食中毒になる」という話を聞くことがあるかと思います。
その原因となるのがウェルシュ菌です。ウェルシュ菌は空気を嫌う菌なので、カレーのように大きな鍋で調理される食品の中心部、空気に触れない部分で繁殖します。
このため家庭のような少人数調理よりも、大量調理で発生しやすいのが特徴で別名「給食菌」とも言われています。このため大人数で食べる料理にはウェルシュ菌への注意が必要になります。
ウェルシュ菌はヒトの小腸で増殖して毒素を放出し、食べてからおよそ10時間後に下痢症状をひき起こします。ウェルシュ菌の多くは本来熱に弱いのですが、中には100℃で6時間加熱しても死滅しない耐熱のヨロイのようなもの(芽胞)を形成するものがあります。これが食中毒の大きな原因となります。
大腸菌
腸管出血性大腸菌O-157に代表される大腸菌の食中毒は、湧き水や井戸水の飲用でも報告されています。
一見キレイに見えても汚染されているケースは少なくなく、自然の湧き水は周辺に棲む動物のフンから大腸菌が混入しているおそれがあります。直接飲む以外にも、野菜や果物を川の水で冷やしてそのまま口にするといった場合も食中毒のリスクが高まります。
アウトドアで食中毒を防ぐには?
食中毒の予防はまず手洗いです。キャンプ場は水道場所が遠いので手洗いがおろそかになりがちですが、ウォータージャグやハンドソープを持参してこまめに洗えるようにしておきましょう。
手洗い代わりにアルコールジェルを使うのも有効ですが、手が汚れている場合はアルコールの消毒効果が半減してしまいます。特に調理を担当する方はこまめに手洗いを行うようにしましょう。
また、生の肉はよく加熱することが基本です。バーベキューでは火力が安定せず焼きムラが出ることがあります。夜に野外で飲食する場合は、薄暗いところで中まで火が通っているか目視しづらいことがあります。食中毒を避けるためにも照明は十分な明るさのものを用意しておきましょう。
トングやトレーは生肉専用のものを用意し、誰が扱っても分かるように器具に「生肉用」と明記しておくと安心です。また、料理は完成してから2時間以内に食べるのが理想的です。室温に長時間置いておくと食中毒はもちろん野生動物に狙われて荒らされることもあるので、食品はクーラーボックスなどで保管するようにしましょう。
湧き水を飲む場合は水質調査が行われているかどうかがポイントになりますが、自然の水はいつどこで汚染されるか分からないので、飲用は避けるのがベターです。どうしてもの場合は煮沸してから飲むのが良いでしょう。ちなみに大腸菌は75℃で1分以上加熱すれば死滅するので、十分沸騰させれば問題ありません。
まとめ
食中毒は予防のポイントをきちんと知っていれば、大幅にリスクを減らすことが出来ます。キャンプの思い出が楽しいものになるように、事前の準備をしておきましょう。