医療や介護の現場で耳にする機会の多いサルコペニア。老化による筋力低下のことですが、放っておくと自分で身の回りのことを行うのも困難になり、生活の質を大きく下げてしまう要因になります。今回はサルコペニアがもたらす筋力への変化、そして予防のための食生活について解説していきます。
サルコペニアとは
サルコペニアはギリシア語で筋肉を意味するsarco、消失を意味するpeniaを組み合わせた言葉で「老化による筋力低下」を意味します。
日本老年医学会が提唱している「フレイル」も老化による衰えを意味しているので一見似たような言葉ですが、フレイルは筋力低下だけでなく認知機能や栄養状態などより広域の意味を持つのに対し、サルコペニアは筋力低下に注目したものになっています。
変化は40代から始まっている?
サルコペニアというと、65歳以上のいわゆる高齢者と呼ばれる時期から始まるイメージがあります。
しかし実際の加齢変化は早ければ40代から始まっていると考えられていて、デスクワーク主体の活動や運動不足、酸化ストレスの増加、持病、たんぱく質やエネルギーの日常的な不足などが加齢的要素にプラスされ、サルコペニアをさらに進行させます。
加齢にともなう筋力の変化は個人差が非常に大きく、この点からも個人の普段の生活習慣や健康状態が密接に結びついていることが分かります。
加齢ダメージを受けやすい筋肉とは
全ての部位の筋肉が一律に衰えていくわけではなく、抗重力筋、つまり立つ姿勢のときに身体を支える首、背中、肩、腹部、腰、臀部、大腿部の筋肉が加齢による変化を受けやすいと考えられています。
また、瞬発力を示すといわれる速筋と持久力を示すといわれる遅筋では、速筋の方が加齢によって衰えやすい傾向にあります。速筋が衰えると、サッと立ち上がったりベッドから起き上がったりといった動作が苦手になっていきます。
診断基準のひとつとして、握力が男性で25㎏未満、女性で20㎏未満だとサルコペニアが疑われます。
サルコペニアを予防するには
日常的に身体を動かす、栄養バランスを意識した食事を摂るといった対策はサルコペニア予防に非常に有効です。特に栄養面では以下を意識して摂るようにするのがおすすめです。
- 骨格筋を維持するためのたんぱく質
- 適度な量のエネルギー
- 筋肉合成に必要なビタミンB群
- 丈夫な骨を保つカルシウムやビタミンD
たんぱく質の1食分の目安は「片手の手のひら半分~1つ分」と覚えておくと簡単です。肉や魚の厚みは手のひらの厚みと同程度にします。
糖尿病などで糖質が気になる場合でも、炭水化物の摂取を極端に少なくすることはおすすめできません。低血糖のリスクはもちろん、炭水化物の摂取があまりに少ないとたんぱく質を身体のエネルギーとして消費してしまうので、骨格筋が減少してしまうのです。
適正な炭水化物量はかかりつけの医師や管理栄養士と相談して、適切な量を把握しましょう。
まとめ
サルコペニアによる機能低下は、老後の生活の質に大きな影響をもたらします。若年のうちから進行するケースもあるので、運動による筋力維持と食事の質への配慮を高めていきましょう。