「機能性ディスペプシア」あまり耳なれない言葉ですが、症状的には体験されている方が多いのではないかと思います。胃もたれや、みぞおちのところが痛むといった症状は、以前は神経性胃炎とか慢性胃炎といわれていました。「何か悩みごとがありませんでしたか?」「ストレスや疲れがたまっていたんでしょうね」と問診されていたはずです。また画像検査や内視鏡検査をしても半数程度の人は、胃の粘膜に炎症や潰瘍などの異常が見られませんでした。最近はそうした場合「機能性ディスペプシア」と診断されることが多くなっているようです。「ディスペプシア」は上腹部愁訴と訳されて機能性胃腸症のなかでも胃痛、みぞおちの痛み、胃もたれ、胸やけなど上腹部に症状があるものが「機能性ディスペプシア」と呼ばれ、これまで病名として胃下垂などと呼ばれていたものも含まれます。
目次
機能性ディスペプシアの症状
機能性ディスペプシアの症状がでる場所
- 胃の中心辺り
- みぞおちの辺り
機能性ディスペプシアの主な症状
機能性ディスペプシアの主な症状としては以下のようなものがあります。
- 食後のもたれ
- 食べ始めて直ぐにお腹が満腹になる
- みぞおちの痛み
- みぞおちが焼けるような感じ
機能性ディスペプシアの診断基準
4つの主な症状のうち、1つ以上が3か月以上あること。さらに、上部消化管内視鏡検査などをおこない潰瘍や炎症が認められない場合です。
機能性ディスペプシアのその他の症状
機能性ディスペプシアのその他の症状としては以下のようなものがあります。
- 胃のむかつき
- 食欲不振
- 吐き気
- 嘔吐
人によって症状は様々です。また一般的には若い世代に痛みを伴う症状が多いのに対し、中高年世代には胃もたれや膨満感が多くみられます。
機能性ディスペプシアの原因
食事をすると口から入った食べ物は、まず胃が拡張して食べ物を受け入れます。続いて胃酸が分泌され胃の筋肉が伸び縮みして動き、食べ物と胃酸を混ぜ合わせ、消化しながら十二指腸の方へと運びます。この消化活動の中の、胃から十二指腸へ送る運動に障害があると胃もたれなどの症状が出てきます。また胃は拡張したときに食べ物を貯める働きがありますが、拡張に障害があると、食べ始めてすぐにお腹が満腹になることが分かっています。
機能性ディスペプシアの主な原因
機能性ディスペプシアの主な原因としては以下のようなものになります。
- 胃や十二指腸の知覚過敏や胃の内圧の上昇など
- 胃や十二指腸の知覚過敏など
知覚過敏とは感じ方が敏感になって、刺激が強く感じる状態をいいます。胃の運動障害と知覚過敏を起こす要因として「機能性ディスペプシア」と診断された方には、仕事や人間関係において長期間にわたってストレスを抱え、抑うつ状態や不安状態になっているケースも少くありません。ストレスは、かつては胃もたれやみぞおち痛の主な原因とされていました。しかし今日では、直接的な原因というよりは、症状を悪化させる要因と考えられています。私たちの脳はストレスを不快な経験として認知し、「副腎皮質刺激ホルモン(放出ホルモン)」がストレスホルモンの分泌をうながします。それはストレスに負けないための生体反応なのですが、その反応によって胃などの上部消化器の運動を抑制し、反対に大腸などの下部消化器の運動を活性化する作用があり、その反応がさらに消化管機能異常を悪化させ、慢性化するという脳―胃腸相関(悪循環)の関与も知られています。そのためストレスが続くと、胃ではみぞおちの痛みなどの「機能性ディスペプシア」が、そして腸では下痢や便秘などの過敏性腸症候群を起こしやすくなります。
機能性ディスペプシアの予防と対策
日常生活での注意点
以下のようなことを日常では心がけましょう。
- 食事はゆっくりよく噛むように心がける
- お腹いっぱいに食べずに腹八分目にする。
- 和食を基本にバランスの良い食事を摂る。
- 香辛料や刺激の強いものは控える。
- 脂肪分の多い食品はなるべく控える。
- 食事はなるべく1日3食決まった時間に摂る。
- 就寝前や夜遅くなっての食事は避ける。
- 意識的にリラックスできる時間を作る。
- 普段の生活の中でなるべく体を使う。
- 睡眠不足にならないようにする。
- 十分な休養をとる。
- アルコールは控えめに楽しく飲む。
- タバコは吸い過ぎに注意する。
- あまり神経質にならないように心がける。
終わりに・・・
機能性ディスペプシア」の最大の原因はストレスなので、日常生活では軽減に努めて下さい。ストレスを完全に取り去ることは出来ないでしょうが、運動や趣味など健全な方法で解消する努力をしましょう。