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川崎病の症状と対策について

川崎病は、川崎富作先生(日赤医療センター)が1961年に患者さんを発見され、1967年に手足の指先から皮膚がむける症状を伴う小児の「小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群」として発表され、先生の名前をとって川崎病という病名になりました。1970年以降、2年毎に川崎病全国実態調査が実施されています。2013年の調査では年間に約14,000人の小児が発症しています。近年、患者数は増加傾向にあるようです。今回は難病である川崎病を解説していきます。

川崎病とは

4歳以下の乳幼児に多くみられる原因不明の急性の全身性血管炎です。川崎病は世界各地で報告されています。日本人、日系アメリカ人など東アジア系の人種に多い病気で、男の子が女の子の約2倍の頻度でかかります。適切な治療を行えばほとんどの子どもたちはよくなりますが、川崎病にかかって最も重大な問題は、心臓に合併症が起こることです。川崎病は長期間の経過観察と管理が必要な病気と考えられています。川崎病は夏と冬に発症することが多く、数年に一度流行期があるようです。

川崎病の原因

原因はまだはっきりしていませんが、現在の主流な考えとして、ウイルスの感染や細菌に感染したのをきっかけにそれを防ごうとする免疫反応がおこり、全身の中小の血管に炎症が生じるのではないかと考えられています。また家族に川崎病にかかった人がいたり、人種差(日本人に多い)があること、なりやすい遺伝子の型があることなどがわかっています。何らかの川崎病になりやすい素因(体質)があって、感染症をきっかけに発症すると考えられていますが、詳細は分かっていません。現在、川崎病の発症に関わる遺伝子を明らかにする研究や、新たな治療法の研究が進められています。

川崎病の症状

川崎病の主な症状

主な症状は以下のようなものになります。

  • 5日以上の高熱が続く(38℃以上)
  • 体に発疹が出る
  • 目が充血する(ウサギのような目になる)
  • 急性期は手足がむくみ、回復期は指先の皮がむける。
  • いちご舌がみられたり、唇が真っ赤になったりする。
  • 片側の首のリンパ節が腫れる。

以上の6つの主な症状のうち、5つ以上がみられた場合と、4つの症状しかなくても冠動脈瘤(かんどうみゃくりゅう)がみられた場合は川崎病と診断されます。なお川崎病の代表的な6つの症状は、かぜなどの病気でも起こることがあるため、見逃しやすいものです。少しでも気になる症状がある時は、早急に専門の医療機関で受診しましょう。

その他の症状

主要症状のほかに、BCG接種部位が赤くなっている、関節の痛み、下痢、腹部膨満などがあります。全身の血管炎のため、その他にいろいろな症状が出ることがあります。

心臓の合併症

冠動脈瘤とは

冠動脈は、心臓に酸素や栄養を送る重要な血管です。川崎病にかかるとこの冠動脈の血管壁が炎症のため弱くなり、そこに血圧が加わると風船みたいに膨らんで瘤(こぶ)ができます。これを冠動脈瘤(かんどうみゃくりゅう)といいます。最近は治療法の進歩により、冠動脈瘤になる割合はかなり少なくなってきたようです。

心筋梗塞の原因

冠動脈瘤があると血の固まり(血栓)が出来やすくなり、血栓が冠動脈を塞いでしまうと、瘤(こぶ)と正常な血管の移行部が狭くなってしまい、それより先の心筋に血液を送れなくなり、心臓の筋肉が壊死(えし)し、心筋梗塞を引き起こすことがあります。

川崎病の主な治療法

アスピリン療法

アスピリンという薬を内服する治療法です。血管の炎症を抑えたり、熱を下げたり、血栓ができるのを防ぐ効果があります。退院後も23か月は自宅で服用を続けます。副作用として出血時に血が止まりにくくなることがあります。症状の軽い患者さんにはこの治療法のみが行われることもあります。

免疫グロブリン療法

免疫グロブリンは血液製剤で、献血された人の血液からガンマグロブリンというたんぱくを取り出したものです。この中には細菌やウイルスが体に侵入してきた時、感染を防ぐ抗体が含まれていて、全身の炎症を抑え、感染や冠動脈瘤ができるのを防ぎます。1224時間かけて点滴で注入するため、57日程度の入院治療が必要です。副作用は少なく安全性の高い治療法ですが、まれに点滴中にアレルギーや血圧低下などの副作用が現れることがあります。熱がある場合は、免疫グロブリンとアスピリンを併用します。2つの薬を使うことで、冠動脈瘤の発症を大幅に減らすことができるようになりました。

ステロイド併用療法

免疫グロブリンとアスピリン2つの薬の併用で効果がみられない場合や、重症化しそうだと判断された場合には、炎症を抑える効果がより強い、ステロイドを追加することもあります。重症例では免疫グロブリン療法と併用することにより、冠動脈瘤を合併するリスクを減らせるという研究報告があります。副作用としては、ウイルスや細菌に感染しやすくなるなどがあります。

抗TNF

治療しても熱が下がらない場合に使用します。抗TNF薬は、体内で炎症を起こすTNF-α(タンパク質)の働きを抑えることにより、炎症をしずめ症状を改善します。副作用としては、感染症、アナフィラキシー、肝機能障害などがまれにでることがあります。通常は川崎病の急性期に1回点滴で静脈内に注射します。

血漿交換療法

治療しても熱が下がらない患者さんの血液にある炎症物質を取り除くために、体外に取り出した血液を血漿分離器で血球成分と血漿(けっしょう)成分に分離した後、患者さんの血漿を廃棄し、その分を健常な人の血漿(あるいはアルブミン(蛋白))を体内に戻すことで炎症物質を除去する治療です。薬物治療のみでは十分な治療効果が期待できず、血漿交換を行うことにより病状の改善が期待できる場合に適応となります。

冠動脈瘤ができた場合の治療法

冠動脈瘤が発見された場合には、血栓による血管の閉塞を予防するために、アスピリンなどの血液をサラサラにする薬を服用します。瘤の大きさが6ミリ以上の場合には、ワルファリンという血液が固まるのを妨げる薬を追加して、より強力に血栓を防ぎます。冠動脈瘤の状態によっては、心臓カテーテル治療やバイパス手術が必要になることもあります。

退院後の注意点

熱が下がり、冠動脈瘤がなければ、退院できるそうです。ただし、その後も23か月間はアスピリンを服用し、小学校に入学するまでは、定期的に心臓の検査を受ける必要があります。日常生活や学校生活、運動など、普段どおりにできます。ただし、再発することもあるので、発熱した際には川崎病の症状に注意して下さい。また、冠動脈瘤ができなかった人でも、大人になると血管の収縮機能が少し落ちることがわかっており、動脈硬化のリスクが高くなると予測されています。そのため生活習慣病の予防に努めて下さい。

終わりに・・・

川崎病は原因が不明な病気なので予防も難しく、特に乳幼児は体の不調を訴えられないので、普段からお子さんの不調のサインを見逃さないように気をつけて下さい。川崎病は診断、治療とも年々進歩しています。また早期に発見し早期に適切な治療をすることで、合併症のリスクも低くなっています。もしお子さんが川崎病と診断されたら、担当医から病状をよくお聞きになり、適切な対処をして病気を克服するようにしましょう。