毎年健康診断を受ける方は多いと思いますが、その検査値項目にある「空腹時血糖値」が正常でも、実は糖尿病にさらされている危険性があります。それは「血糖値スパイク」と呼ばれ、検査で見逃されてしまいやすいのが特徴です。今回は血糖値スパイクの仕組みに加えて、糖尿病のリスクと日々に役立つ食生活情報についてお伝えしていきます。
血糖値スパイクとは?
血糖値は、「食事をすると上がる」「空腹になると下がる」を繰り返しています。身体が自動的に血糖値を調整し、本来なら決まったゾーン内に収まるようになっています。このゾーンを超えて上がったり下がったりすると意識の消失やふらつきといった発作症状を招くほか、長期間持続すると血管を傷つけて手足など末端の痛みやしびれなど神経障害、重度になると壊死になるケースや、網膜症、腎臓病の原因となります。
健康診断では「下がっている状態」を検査します。これがいわゆる空腹時血糖値で、110mg/dlまでが正常値です。
しかし、空腹時血糖値が正常でも実は食後にゾーンを超えた高血糖を示している場合があります。食べたあとにスパイク(とげ)のように急角度で上昇することから「血糖値スパイク」と呼ばれ、気づかないうちに血管を傷害してしまうのです。糖尿病のリスクだけでなく、動脈硬化や認知症、がんといった生活習慣病のリスクまでも高めてしまいます。
血糖値スパイクの原因とは?
血糖値スパイクを招くのは以下のようなケースが挙げられます。
- 家族に糖尿病患者がいる
- 朝はパンのみ、昼はめん類や丼など炭水化物オンリーの食事が多い
- 朝食ぬき、夜遅い食事など1日の食事回数や食事時間がまちまち
- 1日に摂る野菜や海藻類の量は、火を通さない状態で両手手のひら1杯程度
- 甘いものやジュース、砂糖入りの缶コーヒーを毎日摂っている
- 通勤や家事労働などを含めても、運動する時間が少ない
思い当たる項目が多く、食事するとボーッとしたり、食後1~2時間後に強い空腹感を感じたりする方は要注意です。
血糖値を正常化するためには?
血糖値をコントロールするには、バランスの良い食習慣と適度な運動が重要です。
あまり難しく考えず、取り組みやすそうな部分から生活に取り入れていきましょう。
①毎日毎食、野菜や海藻類を摂るようにする
血糖値が高めの方に共通するのは圧倒的に「野菜不足」という点です。1食の目安は生の状態の野菜で両手手のひら1杯分。加熱してかさが減った状態なら片手手のひら1杯分です。野菜以外にも、海藻やきのこ、こんにゃく類もおすすめ。これらは血糖値が気になる方向けのトクホにも含まれている食物繊維を豊富に含んでおり、血糖値の急上昇を防ぎます。また、玄米やライ麦パンといった茶色の穀物も食物繊維の多い食品です。
②砂糖、果糖を多く含むものは少量に
スナック菓子を含む菓子類は高カロリーであることが多く、メタボリックシンドロームの原因になります。高血圧やコレステロール異常を伴う場合、血糖値の異常を合併しやすくなります。また、甘いジュースやスポーツドリンクといった清涼飲料水、加糖タイプの缶コーヒーは砂糖や果糖を多く含みますが、液体の場合吸収速度が速いので血糖値スパイクを起こしやすくなります。普段の水分補給は水かお茶などの砂糖を含まないものが良いでしょう。また、野菜の代わりに果物をたっぷり召し上がる方もいらっしゃいますが、果糖の摂りすぎになってしまうので注意が必要です。
③毎日こまめに運動を
身体を動かすことは糖尿病予防として非常に効果的です。目安としては1日20分以上のウォーキングがおすすめ。通勤や家事で意識的に身体を動かしたり、エレベーターよりも階段を使ったりしてこまめに運動習慣を増やしましょう。特に仕事でも車を運転する時間が長い方や、デスクワークであまり動かないという方は1時間ごとに水分補給ついでのストレッチを試してみましょう。軽く身体を動かすだけでも血流が良くなり、糖尿病予防だけでなくコリの解消にもつながりますよ。たまにたっぷり運動するより、少しずつ身体を動かすクセをつける方が糖尿病はじめメタボリックシンドローム予防には効果的です。
まとめ
今回は健康診断でも見逃される可能性の高い「血糖値スパイク」についてお伝えしましたが、重要なのは血糖値スパイクの有無ではなく、血糖値スパイクを引き起こしやすい生活習慣になっていないかという点です。仮に今は平気でも、1歳ごとの加齢で血糖値リスクは2%ずつ上がるともいわれています。長生き社会に備えて、今から健康的な習慣作りを心がけましょう。