昨夜のいびきがうるさかったと家族や友人から指摘されたことはありませんか?大きないびきは身体の悲鳴です。いびきは、睡眠中に上気道(のど)が狭くなったとき、そこを通る空気が発する振動音です。一時的ないびきは異常なものではありませんが、慢性的にいびきをかく場合は注意が必要です。うるさいほどのいびきを何故かくのでしょうか。その疑問を解くことが、睡眠時無呼吸症候群の理解につながります。
目次
睡眠時無呼吸症候群とは
いびきはのどが振動している状態ですが、のどがさらに狭くなると、空気(酸素)がうまく取り込めないために、睡眠中でも苦しく感じます。そうなると無意識に必死で空気を取り込もうとします。それがのどの振動を促し、大きな音(いびき)になるのです。そのためいびきには「睡眠時呼吸障害」という病名がつけられています。日本では睡眠時呼吸障害の人が200万~300万人いると考えられています。いびきをかく人は、睡眠時の血液中の酸素量が低下しています。健康な人と比べて30%も低下する人もいます。無呼吸を伴ういびきは、いびきがしばらく止まり(平均30秒、長い時で2分以上)、その後あえぐような激しい息、またはいびきで呼吸が再開するのが特徴です。それが顕著に起こり、様々な症状が引き起こされるのが「睡眠時無呼吸症候群」です。睡眠時無呼吸症候群の定義は「10秒以上続く無呼吸・低呼吸が1時間に平均5回以上認められ、更に一部は心拍数や血圧のような自律神経の活動性が低く、規則正しい睡眠中にも認められる場合」となっています。睡眠時無呼吸症候群は英語でSleep Apnea Syndromeといい、頭文字をとってSASと呼ばれています。
睡眠時無呼吸症候群の原因
睡眠時無呼吸症候群の主な原因
睡眠時無呼吸症候群は原因によって3つのタイプに分類されています。
3つのタイプについては以下の通りになります。
1.閉塞型
睡眠中に気道やのどがふさがり上気道に空気が通る十分なスペースがなくなり呼吸が止まってしまうタイプです。こうした無呼吸を「閉塞型睡眠時無呼吸症候群」といいます。一般に、睡眠時無呼吸という場合は、この閉塞型無呼吸症候群のことを指します。
閉塞型無呼吸症候群を発症する原因については以下のようなものになります。
- 肥満
- 飲酒
- 鎮静剤の使用
- 加齢
- のどが狭い
- 首が太い
- 頭が丸い
- 甲状腺機能低下症
- 先端巨大症(成長ホルモンの過剰分泌)
- 脳卒中
- 扁桃肥大
- アデノイド(咽頭扁桃)肥大
- 重度の過蓋咬合(かみ合わせが深い)
- 下あごが小さい
- アレルギー性鼻炎
- 花粉症
2.中枢型
呼吸中枢の異常です。肺や胸郭、呼吸筋、末梢神経には異常がないのに、呼吸指令が出ないことにより呼吸が止まってしまうタイプです。こうした無呼吸を「中枢型睡眠時無呼吸症候群」といいます。このタイプは睡眠時無呼吸の中でも数%程度しかみられません。中枢型睡眠時無呼吸症候群になる原因は様々らしいですが、心臓機能が低下した方の場合には30~40%の割合で中枢型の無呼吸がみられるとされています。
3.混合型
無呼吸発作中に中枢型から閉塞型に移行するタイプです。こうした無呼吸を「混合型睡眠時無呼吸症候群」といいます。
睡眠時無呼吸症候群の症状
睡眠時無呼吸症候群の主な症状
無呼吸が起こるとその度に、覚醒反応といってごく短時間の目覚めが起こります。その結果窒息死は起こりませんが、その代わり睡眠はとぎれとぎれの質の悪いものとなります。
睡眠時無呼吸症候群の主な症状については以下のようなものになります。
- 大きないびき
- 眠っている間に呼吸が止まる
- 夜中に何度も目が覚める
- 夜中に何回もトイレに行く
- 朝起きた時に頭が重く感じる
- 熟睡感がない
- 日中に眠気が強い
- 集中力がなくなる
- 運転中居眠りしそうになる
「睡眠時無呼吸症候群」では、睡眠中に血液中の酸素濃度が低下した状態が続きますので、「高血圧」・「心臓循環障害」・「脳循環障害」など重大な合併症を引き起こすこともあります。また、小児も「睡眠時無呼吸症候群」になることがあります。
上記の症状の他に、小児の症状については以下のようなものがあります。
- 成長ホルモンの分泌が悪くなり、発育が遅れる
- 胸部の変形
- まれに小児突然死症候群等を引き起こします
睡眠時無呼吸症候群の予防と対策
生活習慣の改善
生活習慣を改善することによって、「閉塞型睡眠時無呼吸症」の方は、予防することが可能です。閉塞型睡眠時無呼吸の半数以上は、肥満の方だそうです。そのため減量をすることで、症状が改善したと数多くの報告がされています。まずは肥満を解消する事が大切です。
肥満改善の注意点としては以下のようなものになります。
- 食事は1日3食規則正しく摂る。
- 腹八分目を心掛ける。
- ゆっくりよく噛んで食べる
- メニューの基本は和食にする。
- 食事全体のカロリーを低めにする。
- 過度な飲酒を避ける。
- 過度な喫煙をしない。
- 適度な運動をする。
- 日常生活の中で体を動かす工夫をする。
食事の際は、よく噛むことで脳の満腹中枢を刺激し食べ過ぎを防ぎます。
終わりに・・・
睡眠中の「いびき」や「呼吸の状態」は自分では、なかなか分からないものです。周りの人から寝ている時のいびきや無呼吸を指摘されている方は、専門の医療機関で受診して下さい。周りでいびきが酷い方や寝ている時に呼吸が止まっている方がいたら、ぜひ専門の医療機関での受診をすすめてあげて下さい。