身近な植物に、実は毒があることをご存じでしょうか。スイセンの食中毒などがニュースで報じられることもありますが、中には死亡してしまう事例もあります。食品と間違えやすい有毒植物とその症状、見分け方についてまとめました。
件数ワースト1位は「スイセン」
厚生労働省がまとめている平成21~30年のデータによると、報告件数では「スイセン」がトップです。身近に生えていることの他に、ニラと間違えやすい見た目であることが要因です。また、球根部分をノビルやタマネギと勘違いして食べてしまうケースもあります。
スイセンの毒となるのはアルカロイドで、植物全体に含まれています。食後30分ほどで嘔吐や頭痛などの症状が出ますが、死亡例も1件報告されています。
見分け方としては、揉んでみてニラ特有の刺激臭がせず弱い香りである場合にはスイセンの可能性があります。身近に生息している植物なので、小さい子どもが口に入れないよう注意しましょう。
次に件数が多いのはジャガイモです。日常的に食べるものなので意外ですが、過去10年で21件の食中毒事例が報告されています。ちなみに患者数では346名と有毒植物の中ではトップです。
芽の付け根の硬い部分や、光を受けて緑色になった皮の部分にソラニンというステロイドアルカロイドが含まれていて、苦みを感じることがあります。ソラニンは水溶性なので、茹でたり水にさらしたりすると食中毒予防に効果があります。また、家庭で栽培しているとトマトに似た実をつけることがありますが、この実も有毒なので食用は控えましょう。
死亡例が多いのは「イヌサフラン」
紫色または白い花をつける植物で、観賞用として広く栽培されているのがイヌサフランです。コルチカムとも呼ばれます。葉がギョウジャニンニク、ギボウシとよく似ているので誤食されることがありますが、植物全体にコルヒチンという強力なアルカロイド毒素を含みます。
食べると嘔吐や下痢などの胃腸症状の他、皮膚感覚の減退、呼吸困難といった症状をひき起こします。
ギョウジャニンニクとの違いは葉の数で、1つの芽からたくさん葉が出ているのがイヌサフラン、1~2枚なのがギョウジャニンニクです。また、ギョウジャニンニクの方は葉に強い臭みがあります。
次に死亡例が多いのはトリカブトです。アルカロイド系の猛毒を含むことで有名ですが、ニリンソウという食用の葉と酷似している上に同じ場所に生育するので間違われやすくなっています。下痢や嘔吐の胃腸症状、麻痺、最悪の場合は死亡してしまうほどの強い毒です。
ニリンソウが白、トリカブトが紫の花を咲かせるという違いがありますが、花の時期でないとほとんど見分けがつきません。
まだまだある!間違えやすい有毒植物
上記で紹介した以外にも、下記のような有毒植物があります。
- チョウセンアサガオ:
根はゴボウ、実はオクラと間違われやすい - バイケイソウ:
ギョウジャニンニク、ギボウシと間違われやすい - クワズイモ:
サトイモと間違われやすい - ヨウシュヤマゴボウ:
ゴボウの一種と思われがちだが実は有毒 - アジサイ:
季節のお膳にあしらわれたものを誤食する危険がある - グロリオサ:
根がヤマイモと間違われやすい
チョウセンアサガオはダチュラやエンジェルストランペットとも呼ばれ、一般家庭でもよく観賞用に栽培されています。チョウセンアサガオを土台にして接ぎ木されたナスで食中毒を起こした事例があるので、家庭菜園では注意しましょう。
また、モロヘイヤは葉の部分には毒がありませんが、実やサヤの部分には毒があります。白いんげん豆を充分加熱しなかった場合にも下痢や嘔吐の原因となるので、家庭で煮る際にはよく水戻ししてしっかり火を通すようにしましょう。
まとめ
身近に生えている花や植物には、意外にも有毒なものがあります。観賞用の草花を誤食してしまうケースが多いので、家庭菜園では食用と観賞用で明確なエリア分けをするようにしましょう。