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骨粗鬆症の予防と対策について

高齢化社会を迎えるにあたり、他人の世話にならずに健康で自活して生きていきたいと多くの方々が願っていたはずです。ところが、多くの方々が数年間の寝たきりなどで介護を受ける経験をしているようです。その寝たきりとなる原因の1つに「骨折・転倒」があります。平成30年版高齢社会白書によりますと、要介護原因は第1位「認知症」18.7%・第2位「脳血管疾患(脳卒中)」15.1%・第3位「高齢による衰弱」13.8%・第4位「骨折・転倒」12.5%となっています。このように寝たきりの大きな原因となる「骨折」(転倒した結果、骨折となるケースが多いです)ですが、骨折しやすい最大の原因は、骨がスカスカになってもろくなる「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」です。骨粗鬆症はこれまで女性特有の疾患とされていましたが、高齢化により男性患者も増加しているようです。将来、寝たきりにならないために、骨粗鬆症の予防は早期に取り組んだほうが賢明です。

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症

長年の生活習慣などにより、骨の代謝バランスが崩れもろくなった状態のことをいいます。骨は骨芽細胞(こつがさいぼう)によって骨形成されると同時に破骨細胞(はこつさいぼう)によって骨吸収され、常に新しく作り直されるという新陳代謝(リモデリング)を繰り返しています。通常は骨吸収(少しづつ溶かされる)と新たな骨形成(新たに作られる)のバランスが保たれていますが、これが崩れて骨吸収が上回った状態が続くと骨量が減少(内部がスカスカの状態)してしまいます。その結果骨がもろくなり、容易に骨折するような状態になるのが、骨粗鬆症です。骨折しやすい箇所は特に背骨、股関節、手首の骨折はまったく力を受けなくても起こることがあります。骨粗鬆症はサイレント・ディジーズ(静かな病気)ともいわれ、自覚症状がほとんどないままひそかに進行していきます。ちなみに骨量とは骨全体に含まれるカルシウムなどのミネラル量のことです。

骨粗鬆症の危険因子

骨粗鬆症の主な危険因子

骨量は成長期に一気に増え、20歳前後で最大骨量に達します。その後40歳半ばごろからは骨量減少が始まります。小柄な女性や痩せている女性は、カルシウムの蓄積量が元々少なく、筋肉量や骨量の多い男性に比べて相対的に骨粗鬆症リスクが高くなります。また、家族歴もリスク要因となり、親が骨粗鬆症や骨折経験がある人も注意が必要です。骨粗鬆症の原因の一つとして、過度なダイエットが指摘されています。思春期に食事抜きなどのダイエットをすると、将来の骨粗鬆症リスクを高めてしまいます。加齢とともに骨量は減っていきますが、骨粗鬆症は、特に閉経後の女性に多い病気です。女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、骨形成を促すとともに、骨からカルシウムが溶け出すのを防ぐ働きがあります。女性は閉経によってエストロゲンの分泌が激減するために、骨を作る働きよりも溶かす働きの方が上回ってしまい骨粗鬆症になりやすいといわれています。

骨粗鬆症のその他の危険因子

その他の危険因子は以下のようなものがあります。

  • 偏食・食塩、リンの過剰摂取
  • カルシウム、ビタミンD、ビタミンK不足
  • アルコールやコーヒーの多飲・過度な喫煙
  • 運動不足・日光照射不足
  • 胃切徐後
  • 糖尿病
  • 甲状腺機能亢進症
  • 高カルシウム尿症
  • ステロイド剤(グルココルチコイド剤)投与
  • 原発性副甲状腺機能亢進症
  • 腎不全
  • 関節リウマチ

骨粗鬆症の危険因子の中には、避けられるものと避けられないものがあります。生活習慣を改善するなど、避けられる危険因子はできるだけ減らすように心がけて下さい。

骨粗鬆症の予防と対策

骨粗鬆症の予防方法

骨粗鬆症治療は骨密度の減少を食い止め、骨折を予防することが中心となっています。薬による治療と併行して「正しい食生活」・「日光浴」・「運動習慣」の指導が不可欠と考えられています。逆の見方をすれば「正しい食生活」・「日光浴」・「運動習慣」は有効な予防方法でもあります。高齢になって後悔するよりは、予防法は10代からしっかり行いましょう。それは、最大骨量が20前後でピークを迎えるからです。日光浴は体内でビタミンDが合成され、カルシウムの吸収を助けてくれます。日中のウォーキングなど外での運動は自然と日光を浴びていますが、真夏の暑い日は窓際にいたりするだけで大丈夫です。運動については、10代の方々はクラブ活動などでしっかり身体を鍛えましょう。自然に骨の形成が促進されます。成人の方は骨に重力がかかる運動を取り入れて下さい。

骨に重力をかける理由

骨にはその長軸に対して物理的な刺激が加わると、微量の電流が骨に伝わり強さが増すといわれています。スポーツ選手の骨密度は、一般の人よりも高いことが知られていますが、物理的な過重負荷が大きいスポーツ選手ほど高いと考えられています。たとえば陸上選手よりも過重負荷の少ない水泳選手の方は骨密度が少ないといわれています。したがって骨粗鬆症を予防する運動はウォーキングやジョギングのような重力のかかる運動が効果的だと考えられます。ウォーキングやジョギングにこだわらず、他の運動でも陸上や床で行う運動であれば自然に重力がかかると思います。運動が苦手な方は「かかとで床ドン」がお勧めです。両足のかかとを上げてストンと落とすだけです。足のつけ根への負荷が大きく大腿部やふくらはぎが鍛えられます。最初、かかとを落とすときは加減して下さい。逆に膝やアキレス腱を痛める恐れがあります。110回ぐらいから始めましょう。また正しい食生活については、カルシウムとビタミンDをしっかり摂取して下さい。

カルシウムとビタミンDについて

カルシウムを多く含む食品は以下のようなものがあります。

  • 乳製品
  • 大豆類
  • 小魚類
  • 緑黄色野菜

ビタミンDを多く含む食品は以下のようなものがあります。

  • さんま
  • うなぎ
  • ひらめ
  • いさき
  • 天日干し椎茸
  • きくらげ

食事については、これが良いといわれる食品ばかり摂るのではなく、栄養バランスが取れた食生活を心がけるようにして下さい。

終わりに・・・

骨は私たちの体や日常の活動を支える大切な器官です。将来、寝たきり状態にならないように骨粗鬆症の予防を無理なく継続できるようにしていきましょう。