
INTRODUCTION
サルモネラ感染症は、冬季より夏季に多く発生しますが、冬季でもピーク時の半分の件数で発生しています。暖房が効いている室内では特に注意が必要です。食中毒は乳幼児や高齢者の発症が多いのではないかと思われがちですが、厚生労働省の年齢階級別食中毒患者数(平成28年~30年)では、20~29歳の方がもっとも多く食中毒になっています。今回はサルモネラ感染症について解説します。
サルモネラ感染症とは
チフスやパラチフス以外のサルモネラ菌の感染により起こった感染症です。
サルモネラ感染症の原因
サルモネラ細菌とは
サルモネラ細菌は通性嫌気性桿菌で腸内細菌科に属し、べん毛によって運動しますが、べん毛を欠く非運動性菌もいます。細菌の大きさは0.7~1.5μm×2.0~5.0μmです。(1μmは0.001 ミリメートル)一般に、サルモネラ細菌の中で胃腸炎をおこすサルモネラは亜種I の菌種のみです。サルモネラ細菌は自然界のあらゆるところに生息し、ペットでは鳥類、爬虫類、両生類が保菌しています。とくに家畜(ブタ、ニワトリ、ウシ)の腸管内では、常在菌として保菌していることが知られています。
通性嫌気性桿菌とは
酸素が存在する場合には呼吸によってエネルギーを生成し、酸素がない場合においては発酵によりエネルギーを得られるように代謝を切り替えることのできる細菌です。サルモネラ菌の形状は棒状または 円筒形です。
サルモネラ感染症の主な原因
以下のようなものが原因になりやすいので注意して下さい。
- 鶏卵
- 食肉
- 生卵や加熱の不十分な卵料理
- 加熱不足の肉・魚料理
- 生卵
- オムレツ
- 自家製マヨネーズ
- 洋生菓子
- 牛肉のたたき・レバ刺など
- 害虫
- ペット
生卵は新鮮なうちに使い、割った卵は早めに使い切ることです。生肉に使った包丁で切った調理済みの食品も食中毒の原因になります。食中毒というと食べ物を連想しますが、爬虫類やカメなどさまざまな動物の糞に混じっているサルモネラ菌などに感染した場合も、下痢や腹痛などの食中毒を起こすことがあります。また害虫やペットが、菌を食品に付けてしまうこともあります。
サルモネラ感染の症状
サルモネラ感染の主な症状
サルモネラ菌の潜伏期間は5時間から72時間です。症状は3~4日続きますが、1週間以上に及ぶことがあります。小児や高齢者では、感染性動脈炎、菌血症などの合併症を起こすなど重症化しやすく、回復も遅れる傾向があるので注意が必要です。
サルモネラ感染症の主な症状については以下の通りです。
- むかつき
- 腹痛
- 下痢
- おう吐
- 発熱
- 血便
人によっては、微熱や食欲不振の症状がまず出て、風邪と間違えることもあります。下痢や嘔吐が治まらない場合や高熱を伴う場合は、早急に病院に行くようにして下さい。下痢が続く時には、水分補給をし、脱水症状を起こさないように気をつけて下さい。 病院に行く時には、下痢などの特徴を医師に伝えるようにしましょう。例えば水のような下痢を繰り返すとか、血便が混じるといった内容です。症状の報告は医師が判断するための貴重な材料となります。
サルモネラ感染症の予防と対策
サルモネラ感染症の予防
食中毒の原因菌は、基本的には加熱処理をすることで、死滅させることができます。そのため、しっかりと火が通ったものを食べることが大切です。もし細菌が混入した食品を食べたとしても、すぐに食中毒を起こすわけではありません。人の体には、食中毒菌などを攻撃する免疫機能が備わっているからです。日頃から体調管理や生活習慣に気をつけて、免疫機能を高めておくことが大切です。また食中毒を起こす菌をいかに繁殖させないようにするかも、予防のポイントの一つになります。統計では、食中毒は飲食店で発生することが多く、家庭での発生率は20%程度です。しかし保健所などに報告されていない、家庭での軽い食中毒の発生数は、実際には非常に多いと考えられています。そのため家庭での食中毒をいかに防ぐかも大切なことです。
免疫機能を高める
唾液
唾液に含まれる酵素には、強い殺菌効果があります。ただし唾液は、よく噛まないと分泌量も少なくなります。早食いのクセがある人は唾液の分泌が少く、味の異変を感じる前に飲み込んでしまう傾向があるので、味わいながらよく噛む習慣をつけるようにして下さい。
胃液
食品に混入している細菌の大半は酸に弱いので、胃液の中の胃酸によって殺菌処理されてしまいます。胃酸は、私たちのからだが備えている最強の食中毒防御機能といえます。ただし、胃の状態が悪い時やストレスを受けた時には、胃液の分泌量が減り、殺菌力もそれだけ低下してしまいます。そのため消化不良やストレスなどには、十分に気をつけることが大切です。
腸内細菌
腸にすむ多くの細菌のうち善玉菌と呼ばれる乳酸菌やビフィズス菌には、食中毒菌が腸管に侵入するのを防ぎ、からだの外へ排出する働きがあります。日頃から伝統的な発酵食品や乳酸飲料やヨーグルト、食物繊維の多い食べ物(根菜類、きのこ類、海藻類、玉ねぎ)を積極的にとって善玉菌を増やし、腸内環境を整えることも食中毒の予防につながります。
日常生活での予防
サルモネラ菌を付着させない
手をよく洗う、調理器具をきちんと洗う、生肉で使う調理具とそのほかのものに使う調理具を分けるなどの工夫で、食材に細菌やウイルスが付着することを防ぐことができます。
サルモネラ菌を増殖さない
細菌は暖かく湿度の高い場所で増えるため、冷蔵や冷凍を利用して菌の増殖を防ぎましょう。寒い冬でも、暖房がきいている部屋では菌が増えやすくなりますので、要注意です。
サルモネラ菌を死滅させる
食材をしっかりと過熱し、細菌やウイルスを死滅させましょう。特に生焼けの肉には食中毒の原因となる菌がついていることがあるので、中までしっかりと火を通すようにしましょう。
盲点といえるものは、常温で長期保存ができるレトルト食品に外見が似ている、真空パック、チルド食品の保管方法にも注意が必要です。これらの食品は冷蔵で保存するようになっています。常温で保管した結果、ボツリヌス菌による食中毒が報告されているようです。あとは期限表示(賞味期限)を守ることなどが重要です。
終わりに・・・
免疫力の低下を避けるためには、まず睡眠や食事をきちんととること。また、軽い運動や趣味などで気分転換をして、ストレスを解消することを心がけましょう。仕事などの関係で生活が不規則になっている時には、できるだけ生ものは食べないといった自衛策をとることも大切です。